ESCAFE

俺は市内のカフェで働き始めてもう5年になる。
先日、オーナーからこんなことを言われた。

「店長になる気があるなら試験をするから、次の定休日に来なさい」

ということで、今日はその試験とやらを受けに来たわけだが、
肝心なオーナーが居らず、手紙だけが残されていた。

エグゼクティブ　アドバンスド　バイトリーダーの新田くんへ
お疲れ様です
今日は、店長への昇進試験を受けてもらう。
ドアの施錠に始まるいくつかの仕掛けを解いて、君の名前が入った店長
バッジを見つけ出してくれ。
幸運を祈る！！
オーナーより

うちのオーナーは、やたらと長い肩書を作りたがる。
店長も、アドバンスド店長とエグゼクティブ・アドバンスド店長がいる。
どうやら３人目の店長に成れるらしい。
「店長出てこいやぁ～！」のブチギレ神に真っ先に捧げられる供物一号となるのだ。
ちなみに、店長を指名して副店長が出てきたら不満増幅になるから、副店長は作らな
いらしい。
内輪では、普通の店長を並店長と呼び、アドバンスドを上級店長、エグゼクティブを
特上店長と呼んでいた。
これは、特上バイトリーダーから並店長になるための試験であり、社員になれる採用
試験でもあった。
俺は、供物一号と社員を天秤にかけ、複雑な想いを抱えながら、オーナーの風変わり
な試験に挑むこととなった。