「なぁ、御手洗、頼みがあるんだけど、聞いてくれるかい?」
私は、ソファで新聞を広げて読みふけっている御手洗の向かいに腰を下ろすと、おずおずとその顔を覗き込むようにして御手洗に話しかけた。すると目だけをこちらに向けて、御手洗が気味悪そうに眉をしかめた。
「何だい、気持ち悪いな。改まってどうしたんだい?」
「実はさ、僕がお世話になっていた人が先日亡くなったんだけど、その人が生前、実のひとり娘である由佳さんに手紙を残していたようで、それが昨日見つかったらしいんだ。そこには『私の病気は治らない可能性が高いようだ。だからもしもの時に備えてこの手紙を残しておくよ。私がお前を残して逝ってしまう様なことになったなら、私の部屋に用意した謎を解いてごらん。お前に残すそれはきっとこれからのお前の役に立つだろう。こんな物しか残してやれない父を許して欲しい』とだけ書かれていたらしい。そして、彼女は手紙に従って父親の部屋の謎に挑戦したんだけど、その何かを見付けることは出来なかったそうなんだ。そこで、僕に探してもらえないかと依頼してきたんだ」
私がそこまで言い、伺うように御手洗を見ると、御手洗はつまらなそうに小さく息を吐いて私を見た。
「ふぅん、君にね?良いんじゃないか?やってみたまえよ」
御手洗はそう言うと、もう用は無いねと言わんばかりに再び新聞に視線を戻し、文字を追い始める。
「いや、そうじゃなくて・・・あ、そうなんだけど、それを探すのを君にも手伝って欲しいんだ」
さっさと自分の世界に戻ろうとする御手洗を慌てて呼び止めるように私がそう言うと、御手洗は少しの間の後、先程とは比べ物にならない程の迷惑顔を私に向けた。
「僕も?それはまた何故だい。頼まれたのは君なんだろう?」
「それはそうなんだけど、ほら、一人では大変かも知れないし」
「何を情けない事を言っているんだい」
「どうも聞くところによると、変わった仕掛けが施してあるらしくて、ただ探すだけでは見つからないようなんだよ。僕としてもお世話になった故人には恩を返したいし、御手洗頼むよ、助けてくれないか?」
私は言うと、大げさにテーブルに手を付いて頭を下げた。
そんな様子に御手洗は心底呆れたような顔で私を見下し、暫くして深く大きなため息をついた。
「止めたまえよ石岡君。これは君がそこまでする事なのかい?僕には到底そうは思えないけどね?」
しかし御手洗の問いに、私は無言で頭を下げ続ける事で答える。
「やれやれ・・・・・・君を頑固だね。分かったよ」
「手伝ってくれるんだね!?」
パッと顔を上げると、疲れた顔の御手洗と目が合った。新聞を読む気はもう無くなってしまったらしく、畳んで横に置いてある。
「あぁ、仕方が無い。こうなった時の君は本当にしつこいからね。いつまでも付き纏われるくらいならさっさと終わらせた方が余程有意義だよ」
「ありがとう御手洗!!君には感謝してもしきれないよ!!精一杯の感謝を込めて言う私に、御手洗は呆れた視線を向ける。
「いつもこの手で上手くいくと思ったら大間違いだぜ」
「分かってるよ」
「どうだか。さて、そうと決まればさっさと行くぜ。今から行っても構わないんだろう?」
御手洗は言うと立ち上がり、未だにテーブルに両手を付いたままの私を見下した。
「あぁ、うん。いつでもいいって。連絡を入れておくからちょっと待っててくれよ」
私は言うと急いで立ち上がり、電話の元に走った。
それから1時間後、私たちは依頼主、東條由佳さんの家に到着した。御手洗と私は一部屋ずつを担当することにし、彼女に残されたものを探し始めた。
私は、ソファで新聞を広げて読みふけっている御手洗の向かいに腰を下ろすと、おずおずとその顔を覗き込むようにして御手洗に話しかけた。すると目だけをこちらに向けて、御手洗が気味悪そうに眉をしかめた。
「何だい、気持ち悪いな。改まってどうしたんだい?」
「実はさ、僕がお世話になっていた人が先日亡くなったんだけど、その人が生前、実のひとり娘である由佳さんに手紙を残していたようで、それが昨日見つかったらしいんだ。そこには『私の病気は治らない可能性が高いようだ。だからもしもの時に備えてこの手紙を残しておくよ。私がお前を残して逝ってしまう様なことになったなら、私の部屋に用意した謎を解いてごらん。お前に残すそれはきっとこれからのお前の役に立つだろう。こんな物しか残してやれない父を許して欲しい』とだけ書かれていたらしい。そして、彼女は手紙に従って父親の部屋の謎に挑戦したんだけど、その何かを見付けることは出来なかったそうなんだ。そこで、僕に探してもらえないかと依頼してきたんだ」
私がそこまで言い、伺うように御手洗を見ると、御手洗はつまらなそうに小さく息を吐いて私を見た。
「ふぅん、君にね?良いんじゃないか?やってみたまえよ」
御手洗はそう言うと、もう用は無いねと言わんばかりに再び新聞に視線を戻し、文字を追い始める。
「いや、そうじゃなくて・・・あ、そうなんだけど、それを探すのを君にも手伝って欲しいんだ」
さっさと自分の世界に戻ろうとする御手洗を慌てて呼び止めるように私がそう言うと、御手洗は少しの間の後、先程とは比べ物にならない程の迷惑顔を私に向けた。
「僕も?それはまた何故だい。頼まれたのは君なんだろう?」
「それはそうなんだけど、ほら、一人では大変かも知れないし」
「何を情けない事を言っているんだい」
「どうも聞くところによると、変わった仕掛けが施してあるらしくて、ただ探すだけでは見つからないようなんだよ。僕としてもお世話になった故人には恩を返したいし、御手洗頼むよ、助けてくれないか?」
私は言うと、大げさにテーブルに手を付いて頭を下げた。
そんな様子に御手洗は心底呆れたような顔で私を見下し、暫くして深く大きなため息をついた。
「止めたまえよ石岡君。これは君がそこまでする事なのかい?僕には到底そうは思えないけどね?」
しかし御手洗の問いに、私は無言で頭を下げ続ける事で答える。
「やれやれ・・・・・・君を頑固だね。分かったよ」
「手伝ってくれるんだね!?」
パッと顔を上げると、疲れた顔の御手洗と目が合った。新聞を読む気はもう無くなってしまったらしく、畳んで横に置いてある。
「あぁ、仕方が無い。こうなった時の君は本当にしつこいからね。いつまでも付き纏われるくらいならさっさと終わらせた方が余程有意義だよ」
「ありがとう御手洗!!君には感謝してもしきれないよ!!精一杯の感謝を込めて言う私に、御手洗は呆れた視線を向ける。
「いつもこの手で上手くいくと思ったら大間違いだぜ」
「分かってるよ」
「どうだか。さて、そうと決まればさっさと行くぜ。今から行っても構わないんだろう?」
御手洗は言うと立ち上がり、未だにテーブルに両手を付いたままの私を見下した。
「あぁ、うん。いつでもいいって。連絡を入れておくからちょっと待っててくれよ」
私は言うと急いで立ち上がり、電話の元に走った。
それから1時間後、私たちは依頼主、東條由佳さんの家に到着した。御手洗と私は一部屋ずつを担当することにし、彼女に残されたものを探し始めた。
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