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君と脱出

君と脱出
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ゲームタイトル:
君と脱出
制作サイト様:
榛襾の脱出ゲーム
最近の御手洗はインターネットで公開されている脱出ゲームというものに夢中だ。アイテムを集め、知恵を絞って閉じ込められた空間から脱出するのだが、どのゲームもなかなかに工夫が凝らしてあり、私などでは到底クリア出来そうに思えない。
しかしそこは御手洗。流石なもので、行き詰る事もなく、サラリと脱出してみせる。
「すぐにクリアしてしまうのに、面白いのかい?」
私は御手洗の後からパソコンの画面を覗き込みながらそう聞いてみた。すると御手洗はくるりと振り向き、
「すぐにクリア出来るかどうかは問題では無いんだよ、石岡君。どのような仕掛けがあり、どのようにして脱出するのか。その仕組みが大切であり面白いのであって、簡単かどうかは僕にはあまり関係無いんだよ。意外な仕掛けに出会った時なんてワクワクするね!」
と、満面の笑顔を私に向けた。
「へぇ、そういうものなんだ。なら、これなんか楽しめるんじゃないかな」
私はそう言うと、今朝の新聞に折り込まれていた1枚の広告を御手洗に手渡した。それは先日出来たばかりのアトラクションで、『今流行の脱出ゲームを体験してみよう!」と書かれている。その言葉の通り、パソコンのゲームではなく、実際に自分がアトラクション内に閉じ込められ、そこから脱出しなくてはならないものらしい。
私にとっては永遠に出られなくなりそうで恐怖以外の何ものでもないが、御手洗なら難なく出てこられるだろう。
御手洗はしばらくその広告に目を向けていたが、いきなり立ち上がると私の腕を掴んだ。
「面白そうじゃ無いか!早速行こう、石岡君!」
「えぇ!?僕も!?僕はいいよ。君一人で行っておいでよ」
「何を言ってるんだい、君も一緒だよ。ほら、ここをよく見てご覧、『2人1組でお越し下さい』って書いてあるじゃないか」
「本当だ・・・。でも僕にはとても無理だよ」
「やってもみないちから何を弱気な事を言ってるんだい。君はもっと自信を持つべきだね。ほら、行くぜ」
御手洗はそう言うが早いか、私の腕をぐいぐいと引いて玄関に向かう。私は何とか断れないものかと考えを巡らせたものの、何も思い浮かばないままに、ついにはアトラクションの入り口にまで来てしまった。
あぁ、なんという事だろう。まさか私まで来ることになるとは思わなかった。こんな事なら広告なんて見せなければ良かったと後悔したところで、後の祭りではあるのだが。
薄々予感はしていたが、やはり御手洗と同じ部屋に入る訳ではなく、私たちはそれぞれで謎を解かなければならないようだ。しかもお互い協力し合わなければ脱出出来ない仕組みらしく、入り口には『2人の絆が試される時』などと余計な一文が書き添えられている。
つまり、私が行き詰れば御手洗も出る事は叶わなくなるのである。お陰で私だけ早々にリタイアという訳にはいかなくなってしまった。こうなったらもう、せめて御手洗の足を引っ張らない様に精一杯頑張るしか無いのだろう。
自身は、あまり無い。それでもやるしか無いのなら、私に出来る精一杯の事をしようと思う。
タイトル:君と脱出

 

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